
テレビ番組や映画を観ているときに、愛犬がスクリーンをじっと見ているのを見て、本当に内容に興味をもって観ているのだろうか?と疑問に思ったことはないだろうか。
オーバーン大学の新しい科学的研究によると、多くの犬が本当にテレビに夢中になっていることがわかった。
犬が「ちゃんと」テレビを観るようになった背景には、テレビ本体の進化が大きく影響している。
昔の古いテレビはリフレッシュレートが低いため、犬の目には処理しにくいちらつきが発生していた。犬は人間よりも敏感にチラツキを見ているため、飼い主が好きな番組を観ているとき、そばにいる愛犬はおそらくストロボライトを見ていたに過ぎない。
しかし今日の高解像度、高フレームレートのテレビは話が違う。映像や音声が向上したことで、犬は画面上で何が起こっているかを認識し、それに反応できるようになったのだ。
さまざまある種類のテレビ・コンテンツに、犬がどのように反応するかについての研究も進んでいる。
研究者たちは、犬のテレビ視聴尺度(DTVS)と呼ばれるものを開発した。これは、さまざまな種類のテレビ・コンテンツにどのように反応するかを測定するのに役立つ16の質問ツールである。反応には、犬が吠えたり、しっぽをふったり、あるいは画面外の何かを追いかけたりするような行動が含まれる。
研究者は650人以上の犬の飼い主を調査したところ、450人以上の回答者が、飼い犬が実際にテレビを見ていると答えた。そこから、3つの主な行動パターンが浮かび上がった。
1) 動物への興味(DTVS animal)
犬はテレビに映るほかの動物、とくに犬や野生動物に最も強く反応した。
2) フォロー行動(DTVS follow)
画面の外に移動する物体を物理的に追跡する犬もいた。これは、現実のようにテレビの向こう側に映像が存在すると考えていることを示唆している。
3) 人と物への反応(DTVS non-animal)
人や車やドアベルなどの、犬にとって身近な無生物にも反応した。
また、犬がテレビにどう反応するかは、それぞれの犬の性格が大きく影響する。研究者たちは、犬種や年齢ではなく性格が犬の反応に影響することを発見した。興奮しやすい犬は、画面の外の動きを積極的に見たり期待したりする「後追い」行動をとる傾向が強かった。
恐怖心の強い犬や反応しやすい犬は、人の声や呼び鈴のような動物以外の刺激に敏感であった。
興味深いことに、犬の性別、犬種、去勢手術の有無は、テレビの習慣には影響しないようであった。つまり、犬は必ずしもテレビを見るように 「訓練 」されているわけではないのだ。
このように、犬がテレビのコンテンツに反応しているとわかった上で、飼い主に求められる行動はなんだろうか。
やはり犬が目にするコンテンツの内容には注意をしなければならない。
動物が出てくる番組は、好奇心旺盛な子犬を興奮させたり、なだめたりする可能性がある。しかし、大きな音や人間との衝突がある番組は、恐怖心の強い犬にストレスを与える可能性がある。
DOGTVのようなストリーミング・サービスの中には、犬用にコンテンツをデザインしているところもある。小さな子ども同様、犬にも制限をつけて見せることが大切だ。
ほかにもこの研究結果は、保護施設における犬の福祉を向上させるための新しい手段を示している。適切なコンテンツを見せることで、ストレスを軽減し、里親を待つ犬たちに精神的な豊かさを与えることができるかもしれない。
もはやテレビは犬にとって単なるバックグラウンド・ノイズではない。メリット、デメリットを知った上で、愛犬とテレビ鑑賞を楽しみたいものだ。